ごはん粒が壁にくっついている。

ごはん粒が壁についている。


炊飯器の位置は壁に随分と近い場所で、壁と炊飯器の間にしゃもじ立てが炊飯器側にくっついている。


ごはんをよそった後、しゃもじ立てにしゃもじを戻すタイミングで、しゃもじに残ったご飯粒が壁にこすれて壁のほうにへばりついてしまったのだろう。


壁面でカチコチになったそれをごはんをよそう度に目にするけれど、それをとろうという気持ちが起こらないから、ごはん粒はずっとそのまま壁にくっついている。


いつになったら私はそれをとってしまおうと思えるようになるのだろう。


部屋の床は掃除するのに、洗面台も掃除するのに、キッチンも掃除するのに。どういうわけか、ごはん粒がくっついた壁を掃除しようという気持ちが起こらない。


だからごはん粒は何日経ってもそのままそこにある。


このままずっとそこにあったら、次々にごはん粒は蓄積されていっていつの間にかとても大きなこぶのようなものになってしまうかもしれない。そうなったときに私はやっと、もはやごはん粒とは言えないそれを処理するのだろうか。


ごはん粒という小さな問題さえ先送りにしてしまう今の私は、相当に心の余裕がないことを自覚せざるを得なかった。


カチコチになったごはん粒が壁に張り付いている姿は、まるで自分のようだ。


潤いのない心は隅の方に追いやられた気分になっている。


ごはん粒よ、ああ、ごはん粒よ。



ゆたか


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